金利と返済方式
「ローン審査の考え方」「借入限度額の計算方法」に引き続き、今回は金利の種類と返済方式についてご紹介いたします。
住宅ローンの借入では、変動金利又は固定金利、元利均等返済又は元金均等返済の何れかを選択します。
一度、選択すると変更が容易ではなく、変更するには、再審査を要するなど大きな負担を伴います。そのため、予め十分に理解した上で借入を行うことが大切です。
金利タイプ
住宅ローンの金利には、変動金利と固定金利の2種類の金利タイプがあります。
変動金利は、全期間を通して変動するタイプの金利です。
固定金利は、全期間を固定するタイプと一定期間のみ固定するタイプに分かれます。
それぞれの金利は、元となる金利の基準が異なりますので、その時々のトレンドを意識しておく事が大切です。
変動金利
変動金利は、各金融機関が定めるプライムレート(最優遇金利)の平均利率に1%程度を加えたものが基準金利とされています。
基準金利とは、店頭表示金利とも呼ばれる住宅ローン金利の元となる金利です。
基準金利については、各金融機関ごとに毎月の利率が公表されますが、過去数十年間において大幅に上昇した実績が無く、逆に低金利競争により、年々、低下している状況です。
優遇率
上記の基準金利に一定の優遇率を適用したものが、実際に借りる際の金利になります。
例えば、優遇率が2%であった場合は、基準金利-2%=実行金利です。
この実行金利は、優遇金利などと呼ばれます。
変動金利を選択している場合の優遇率は、基本的に通期(全期間)で適用されます。そして、優遇率は、申込の審査時に確定します。
また、固定金利や変動金利の違いにより、優遇率が異なります。一定期間のみ固定とする期間固定金利やその期間固定終了後に変動金利に移行する際の優遇率など、個別に違いがありますので、予め確認しておくことが大切です。
基準金利が高くても、この優遇率の幅が大きいため、実行金利は、非常な低利率となります。
近年では、大幅な優遇率の適用により、実際の借入金利が1%を切る事も珍しくありません。ネット銀行を中心に最優遇金利が0.5%を下回る状況も多く見られます。
優遇率は、個別の申込内容に基づいて決定されますが、基本的には審査承認が得られれば、一定の優遇率が確保される仕組みとなっています。
この様に大変有効な優遇率ですが、後ほど紹介する通り、思いがけないリスクを孕んでいる側面があります。現在の著しい低金利は、この優遇率の適用により成立している事を覚えておきましょう。
5年ルールと125%制限
変動金利では、6か月毎に金利の見直しを行い、5年毎に適用するのが一般的です。
つまり、6か月毎の見直しで金利が変動していても、実際に適用するは、5年毎となりますので、5年間の返済額は変化しません。
これを5年ルールと呼んでいます。
大幅な金利の変動が見られる場合は、5年後には、新たな金利が適用される事になります。
しかし、5年後の支払額が大幅に上昇する可能性を考えると些かリスキーにも感じます。
そこで、どれほど金利が上昇しても、従前の返済額の1.25倍までを上限とするルールが設けられています。
これは、125%制限などと呼ばれています。
5年ルールと125%制限の適用があれば、急激に金利が上昇した場合でも、支払困難のリスクを回避できますが、これらの適用がない住宅ローンもあります。
これらルールの適用が無い変動金利の住宅ローンでは、金利の上昇と連動して返済額も際限なく上昇します。
固定金利
固定金利は、全期間固定型と一定期間のみ固定する期間固定型に分かれます。
固定金利も、変動金利と同じく基準金利に優遇率を適用することで実行金利が決まります。
一般的に固定する期間が長いほど、基準金利の利率は高くなります。
2年、3年などの短期固定では、非常に低利率となりますが、20年以上の超長期になると割高の利率になります。
期間固定型については、固定期間の満了後に新たな固定期間を選択するか、又は何も選択しなければ変動金利に移行します。
新たな固定期間は、その時の条件の中から選択します。基準金利についても、その時の条件が適用されます。
また、期間固定の満了後に変動金利に移行する時も、その時の変動金利の基準金利が適用されます。
変動にしても、期間固定にしても、その時の基準金利が適用されますが、その基準金利に対して借入当初に確定していたそれぞれの優遇率を適用することで実行金利が確定されます
それらの優遇率は、当初から変動金利を選択した場合や、期間固定を選択した場合で期間固定満了後に変動金利に移行する場合とで異なる優遇率が設定されています。
ですので、借入当初に金利タイプを選ぶ際は、それぞれの優遇率についても併せて検討する必要があります。
優遇率の盲点
では、ここで優遇率の側面についても、ご紹介いたします。現在の変動金利の基準金利は、金融機関による少々の違いはありますが、概ね2.5%程度が主流です。
ですので、0.5%程度で借入できると言う事は、優遇率が2.0%程度を占めている事が解ります。
この優遇率は、前述の通り、基本的には、通期(全期間)で適用されるものですが、状況によって適用されないケースがあります。
それは、延滞等の債務不履行が生じた時です。優遇金利を基本として毎月の返済プランを立てていた場合は、ただでさえ返済が困難な時に3割増し、4割増しの返済額を求められる事態となりますので、月々の返済プランを立てる際は、不測の事態を想定しておく事も重要です。
返済方式
元利均等返済は、当初から最後までの毎月の返済額が一定額となる返済方式です。
元金均等返済は、返済が進むに従って毎月の返済額が減少する返済方式です。
一般的に多く活用されるのは、元利均等返済です。理由としては、月々の返済額が低く抑えられる事と借入限度額が伸びる事にあります。
元利均等と元金均等の比較
期間35年、利率0.6%、借入額3,000万円で比較した場合、元金均等の方が、毎月の返済額が約7,200円ほど上がりますが、総返済額は、約11万円ほど下がります。
つまり、月々の返済額が上がるものの全体的には、お得な借り方という事ができます。
しかし、元金均等と元利均等では、借入限度額に大きな差が生まれます。
元金均等は、初めの方の返済額が多く、返済が進むに従い徐々に返済額が低下する仕組みです。
という事は、月々の返済額が年収に占める割合が多くなり、借入審査時の基準となる返済比率を圧迫します。
審査金利3.5%で、3,000万円を借り入れる時に必要な年収を比較した場合、元利均等返済の場合では425万円以上の年収があれば借入が可能であるのに対し、元金均等返済の場合は、545万円以上の年収が必要となります。
逆に、年収を500万円として逆に計算してみると、元利均等の場合は3,530万円まで借入できるのに対し、元金均等の場合は2,753万円までしか借入できません。
その差は、777万円にもなりますから、購入物件の規模やグレードにも大きく影響します。
この様に借入限度額が大きく低下してしまう事が、元金均等返済が選ばれない大きな理由の一つとなっています。
また、住宅支援機構のフラット35では、元利均等又は、元金均等の何れの選択も可能ですが、銀行ローンの場合では、元金均等返済の取り扱いが無い場合もあります。
元利均等と元金均等の計算例
毎月返済額の差7,220円/当初
総支払金利の差額110,140円/35年
元金均等の返済額は、毎月少しづつ減少しますが、減少するスピードは、それほど速くはありません。
上記の例で元金均等の月々返済額が、元利均等の月々返済額と同程度になるのは、約17年後です。
6カ月毎の返済(ボーナス返済)
俗にボーナス返済と呼ばれるものですが、賞与の受給の有無に関わらず利用できます。
つまり、通常の返済枠とは別に6カ月毎の返済枠を設ける仕組みです。
3,000万円の借入額のうち、2,400万円を通常返済分、600万円を6カ月毎の返済分として分けます。
6カ月毎返済を導入すると毎月の返済額を大きく下げる事が可能です。
しかし、年2回の返済月は、毎月返済額と6カ月毎返済額の合計額の返済となりますので計画性が必要となります。
そして、この6カ月毎返済を導入した場合は、しなかった場合よりも返済総額が僅かに増えます。
理由は、6カ月毎に1回の返済となりますので、その間の金利が嵩むからです。
ですが、長期で考えるとごく僅かなものですから、毎月の返済額を抑えたい場合は有効な手段だと言えます。
一部繰上返済
一部繰上返済とは、毎月返済や6カ月毎返済とは別に任意のタイミングで返済する事を言います。
俗に繰上返済とも言われていますが、繰上げ返済は、残額の一括完済を意味しますので、混同しないように「一部返済」とも呼ばれています。
一部返済は、全額が元本に充当されますので、高い利息軽減効果が得られます。
一部返済の効果については、期間を短縮するか返済額を軽減するかの何れかの選択が可能です。
一度、効果を選択すると次に一部返済する時まで、同一の効果が維持されます。
一般的に期間短縮にする方が利息軽減効果が高い事もあり、人気があります。
返済条件は、1万円以上かつ1万円単位など金融機関により異なります。
手数料が必要ですが、WEB手続きについては、無料となる場合が多いです。
一部返済の活用
年齢的にゆとりがあれば、一旦、最長期間でローンを組み、後から一部返済で期間短縮する方法も有効です。
住宅ローン減税が終わる10年後又は、13年後から計画的に一部返済を行えば、減税効果と利息軽減効果の両方に期待できます。
あとがき
最後までご覧頂きまして、ありがとうございました。
全3回に渡り、ご紹介して参りました住宅ローンの基礎編も今回で終了となります。
住宅ローンの経験から気になった点について、なるべく実用的な視点でご紹介させて頂きました。住宅ローンのご検討を進められる上でご参考になれば幸いです。
今後も、不動産に関する様々なポイントについて、ご紹介して参りたいと考えております。
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